生活環境影響調査(環境アセス、ミニアセス)とは
許可を要するすべての廃棄物処理施設を設置する場合に、
騒音、振動、悪臭などについて、施設ができた後の変化を予測し、
その予測値が環境規制の範囲内にあるかどうかを評価するものです。
生活環境影響調査は、施設設置者に義務づけられており、
調査のまとめを、産業廃棄物処理施設の設置の許可申請を行う際に、添付書類として提出します。
生活影響調査が必要なケース
前述のとおり、許可を要するすべての廃棄物処理施設を設置する場合に、
周辺住民の生活に及ぼす影響を調査しなければなりません。
許可を要する施設に該当しない場合、当調査は不要です。
自治体により、条例等で定められている条件が異なる場合があります。
最終処分場については、生活環境調査ではなく、環境影響評価が必要となることがあります。
環境影響評価が必要な最終処分場とは?
埋立処分場の面積が
30ha以上 または、25ha~30haのもののうち環境影響評価が必要であると判定された場合
生活環境影響調査から報告書作成まで
生活環境影響調査の調査項目
各調査項目は、廃棄物処理施設の種類及び規模、
処理対象となる廃棄物の種類及び性状、地域特性を勘案し設定することとされています。
焼却施設
調査事項 | 生活環境影響調査項目 | |
大気環境 | 大気質 | 二酸化硫黄(SO2) |
二酸化窒素(NO2) | ||
浮遊粒子状物質(SPM) | ||
塩化水素(HCl) | ||
ダイオキシン類 | ||
その他必要な項目 注) | ||
騒音 | 騒音レベル | |
振動 | 振動レベル | |
悪臭 | 特定悪臭物質濃度 | |
または臭気指数(臭気濃度) | ||
水環境 | 水質 | 生物化学的酸素要求量(BOD) |
または化学的酸素要求量(COD) | ||
浮遊物質量(SS) | ||
ダイオキシン類 | ||
その他必要な項目 注) |
最終処分場
調査事項 | 生活環境影響調査項目 | |
大気環境 | 大気質 | 粉じん |
二酸化窒素(NO2) | ||
浮遊粒子状物質(SPM) | ||
騒音 | 騒音レベル | |
振動 | 振動レベル | |
悪臭 | 特定悪臭物質濃度 | |
または臭気指数(臭気濃度) | ||
水環境 | 水質 | 生物化学的酸素要求量(BOD) |
化学的酸素要求量(COD) 注) | ||
全りん(T-P) | ||
全窒素(T-N) 注) | ||
ダイオキシン類 | ||
浮遊物質量(SS) | ||
その他必要な項目 注) | ||
地下水 | 地下水の流れ |
その他の施設
調査事項 | 生活環境影響調査項目 | |
大気環境 | 大気質 | 粉じん |
二酸化窒素(NO2) | ||
浮遊粒子状物質(SPM) | ||
騒音 | 騒音レベル | |
振動 | 振動レベル | |
悪臭 | 特定悪臭物質濃度 | |
または臭気指数(臭気濃度) | ||
水環境 | 水質 | 生物化学的酸素要求量(BOD) |
または化学的酸素要求量(COD) | ||
浮遊物質量(SS) | ||
その他必要な項目 注) |
注釈等については、お尋ね下さい。
生活環境影響調査の調査対象地域
施設の種類及び規模、立地場所の気象及び水象等の自然条件や
人家の状況などの社会的条件を踏まえて設定します。
調査事項 | 対象地域 | |
大 気質 |
煙突から排出される排ガス | 寄与濃度が相当程度大きくなる地域 |
廃棄物運搬車両の走行によって排出される自動車排気ガス | 廃棄物運搬車両により交通量が相当程度変化する 主要搬入道路沿道の周辺の人家等が存在する地域 |
|
騒音 | 対象施設から発生する騒音 | 騒音の大きさが相当程度変化する地域で、 人家等が存在する地域 |
廃棄物運搬車両の走行によって発生する騒音 | 廃棄物運搬車両により交通量が相当程度変化する 主要搬入道路沿道周辺人家等が存在する地域 |
|
振動 | 対象施設から発生する振動 | 振動の大きさが相当程度変化する地域で、 人家等が存在する地域 |
廃棄物運搬車両の走行によって発生する振動 | 廃棄物運搬車両により交通量が相当程度変化する 主要搬入道路沿道周辺の人家等が存在する地域 |
|
悪臭 | 煙突から排出される悪臭 | 寄与濃度が相当程度大きくなる地域 |
対象施設から漏洩する悪臭 | 対象施設周辺の人家等が存在する地域 | |
水質 | 対象施設から公共用水域に排出される排水 | 対象施設の排水口からの排水が 十分に希釈される地点までの水域 |
地 下 水 |
最終処分場の存在による地下水への影響 | 最終処分場の存在によって地下水の水位、 流動状況に影響を及ぼす範囲 |
現状把握
周辺地域における生活環境影響調査項目の現況、及び予測に必要な自然的、
社会的条件の現況を把握することを目的として、既存の文献、資料、または現地調査により行うこととなっています。
項目 | 予測するために必要と考えられる自然的条件及び社会的条件 |
大気質 | 気象(風向、風速、大気安定度)、土地利用、人家等、交通量及び主要な発生源 |
騒音 | 土地利用、人家等、交通量及び主要な発生源 |
振動 | 土地利用、地盤性状、人家等、交通量及び主要な発生源 |
悪臭 | 気象、土地利用、人家等及び主要な発生源 |
水質 | 水象(河川の流量、流況等)、水利用及び主要な発生源 |
地下水 | 地形・地質状況、地下水の状況(帯水層の分布、地下水位及び流動状況等)及び地下水利用状況 |
生活環境影響の予測
生活環境影響調査項目の変化の程度及びその範囲を把握するため、
計画されている対象施設の構造及び維持管理を前提として、
調査実施時点で一般的に用いられている予測手法により行います。
定量的な予測が可能な項目については計算により行い、
それが困難な項目については、同種の既存事例からの類推等により行います。
予測方法
下記を勘案し、調査項目に係る影響の程度を考察する上で必要な水準が確保されるような予測方法を選定します。
- 生活環境影響調査項目の特性
- 事業特性及び地域特性
予測地点
下記を勘案し、地域を代表する地点等への影響を的確に把握できる地点を設定します。
- 事業特性及び地域特性
- 保全すべき対象
予測対象時期
施設の稼働が定常的な状態となる時期を設定します。
ただし、定常的な状態に至るまでに長期間を要する場合は、
必要に応じて中間的な時期での予測を行います。
影響分析
処理施設の設置による影響の程度について、生活環境影響調査項目の現況、
予測される変化の程度及び環境基準等の目標を考慮しながら行います。
具体的には、環境基準等の目標と予測値を対比してその整合性を検討すること、
生活環境への影響が実行可能な範囲内で回避され、又は低減されているものであるか否かについて
事業者の見解を明らかにします。
調査項目 | 分析内容 | |
大気質 | 煙突から排出される排ガス | 二酸化硫黄、二酸化窒素、浮遊粒子状物質、塩化水素、ダイオキシン類、 その他処理される廃棄物の種類及び性状により排出が予想される項目 |
最終処分場 | 粉じん | |
廃棄物運搬車両の走行によって排出される自動車排気ガス | 二酸化窒素及び浮遊粒子状物質を対象として、 プルーム式、パフ式等の大気拡散式に基づき寄与濃度が最大となると予測される地点 (同等の寄与濃度が複数地点において生じる場合は、それらのすべての地点)、及び その周辺の人家等を含む地域における影響 |
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騒音 | 対象施設及び廃棄物運搬車両から発生する騒音 | 騒音の大きさを対象として、騒音の距離減衰式により騒音の大きさの寄与が 最大となると予測される周辺の人家等の地点(同等の大きさの寄与が 複数地点において生じる場合は、それらのすべての地点)における影響 |
振動 | 対象施設及び廃棄物運搬車両から発生する振動 | 振動の大きさを対象として、振動の距離減衰式により振動の大きさの寄与が 最大となると予測される周辺の人家等の地点(同等の大きさの寄与が 複数地点において生じる場合は、それらのすべての地点)における影響 |
悪臭 | 煙突から排出される悪臭 | 特定悪臭物質のうち廃棄物の種類及び性状により排出が予想される物質の 濃度又は臭気指数を対象として、プルーム式、パフ式等の大気拡散式に基づき 寄与濃度が最大となると予測される地点(同等の寄与濃度が複数地点において 生じる場合は、それらのすべての地点)、及びその周辺の人家等を含む地域における影響 |
対象施設から漏洩する悪臭 | 対象施設周辺の人家等が存在する地域における影響 | |
水質 | 対象施設から排出される排水 | BOD(海域・湖沼についてはCOD)、SS、 その他処理される廃棄物の種類及び性状により 排出が予想される項目を対象として、公共用水域、 水道の取水地点における利水上の支障などの影響を分析する。 |
地下水 | 最終処分場周辺の地下水 | その水位、流動状況を対象として、井戸水の取水地点における 利水上の支障などの影響を分析する。 |
当事務所の関わり
当事務所は、これらについて、既存資料を集めて、
資料が無い場合は、専門の業者に依頼しデータを作成します。
集めた資料等を、予測、評価し、都道府県知事に提出できる資料にまとめ、
さらに、住民説明会時に配布する冊子にまとめます。
本ページは、 環境省 廃棄物処理施設生活環境影響調査指針について を参照・抜粋し、わかりやすくまとめたものです。